只今、鬼滅の刃ブームの真っ最中です。

竈門炭次郎が鬼を倒すアニメのお話は、皆さんのほうがずっと詳しく知っておいででしょう。

ところで鬼滅の太刀が本当に、リアルに、実写版的かつ現実的に、実在していたことを、皆さんはご存じでしょうか。

時は平安時代。アニメ「鬼滅の刃」の設定した大正時代よりずっとずっと、星のかなたくらい古いお話です。

 

この実在した太刀が鬼を切った言い伝えは、古文書に書き残されています。

たとえば、太平記にはこう書かれています。

「頼光くだんの太刀を抜きて、牛鬼の頭をかけず切て落す。その頭中に飛揚がり、太刀の峰を五寸喰い切りて口に含み乍、半時許跳び上がり〇〇唸りけるが、遂には地に落ちて死にけり」

これは有名な、一条戻り橋での鬼の襲来と返り撃ちのお話です。

平家物語でも同じ題材が書き留められています。
但し平家物語では、渡辺綱が斬ったと書かれています。

この時使われた太刀のことを、太平記では「之に依りその名を鬼切と伝ふなり」と書いています。

さらに、この太刀の作者は「伯耆の国相見郡に大原五郎太夫安綱と伝鍛冶」と伝わります。

ではこの鬼切という太刀は、その後どうなったのでしょう。

歴史の上でも、この安綱が作った鬼切丸という刀が、たびたび出てきます。

北条氏にあったのを新田義貞がとったとか、さらに斯波氏が奪ったとか、足利尊氏が強請ったとか書かれています。
有名人ばかりです。

 

最後に現れたのが、2019年12月28日。

場所は奈良県春日大社。

重要文化財 太刀 銘安綱 (号 鬼切丸 髭切)
京都府北野天満宮所蔵

 

 

また、鬼滅伝説のある刀がもう一振。

室町御伽草子の中に出てきます。

それは、童子切のお話です。

大江山に住む酒呑童子という鬼の親分を、源頼光が斬ったというお話。

この太刀も春日大社の刀剣展に出ていました。

 

国宝 太刀 銘 安綱(号 童子切)

東京国立博物館所蔵

 

あたしは、この春日大社に行って、実物を見てきました。

もし見逃した方がございましたら、地団駄踏んで悔しがってください。

黒い地肌に強い腰ぞり、板目や波紋のことはよくわかりませんが、一応知ったふりをしてみていました。

周りの人たち(多くは若い女の子)も、ふんふんと頷いていましたが、きっとわかっていないだろうとにらんでいます。

しかし、太刀はこれが鉄かと思えるほど美しい。

思わず触ってみたくなるのは私だけではないでしょう。

触れば、おそらく血まみれになってしまうのですが……

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 (写真はレプリカ)

鬼切丸と童子切

どちらも門外不出になっていますので、この特別展を見逃したら、もう二度とこの兄弟太刀が並ぶところを見ることはできないでしょう。

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なお、伯耆の国には刀鍛冶である安綱伝説の場所が、5か所ほどあります。

安綱には多くの弟子がいたので、あちこちに弟子が展開していたのではないでしょうか。

また伯耆には、当然のことながら、良質の鋼の産地がたくさんあります。

昔から、武家の棟梁が奪い合って持っていた太刀だから、相当高価だったのだろうな。

お宝鑑定団に持っていったらどうなるんだろう?

 

私が夢のようにそんなことを考えていたら、鳥取県観光課から「炭次郎が斬った岩を見に来たいのだけれど」とオファーがありました。

そう、真っ二つになった巨石が、伯耆のど真ん中にあるのです。

これはまた、つぎのお話です。