さて、今度は右ホール。

「最古の日本刀の世界」

そのほとんどが春日大社の所蔵品で構成されています。

いきなり、両刃の直刀が展示されています。これは閻魔大王が持っていそうな剣です。

うーん、なんかこっちの展示は違うぞ。って思いながらガラスの向こうを見つめます。

その先は、ずらりと遺跡から発掘されたような剣が並んでいるのです。

錆びてぼろぼろになり、原形をとどめるのがやっとといった感じ。

反りのない直刀から始まり、毛抜形太刀が並びます。

握りの部分まで鉄で出来ていて、刃自体は直刀であるものの、握り部分が反っている。

ここから反りの歴史が始まり、安綱の時代に腰ぞりになり、そして中ぞりに変化していっただろうことが容易に想像できます。

拵えと呼ばれる鞘の部分もぼろぼろに朽ちていて歴史を感じさせます。

なかには、破損の恐れがあって鞘から抜けないものもあります。

これらがすべて国宝や重要文化財に指定されていて、春日大社の宝物のすごさを感じざるを得ません。

 

小烏造太刀

これが見たかったのです。

小烏と言えば、平家に伝わるという伝説の宝刀。桓武天皇のもとに烏が運んできたと伝わります。

実物は御物になっていて見ることはできませんが、月山貞一が小烏を写して作ったと言われているのがこの太刀。

峰両刃造りといって普通の日本刀のように片刃ではなく、両刃になっています。しかもそれでいて反りが入っている。剣から日本刀に変化してゆく過程だと考えられます。

 

その他にも多くの平安~鎌倉の太刀が並んでいますが、最後の方に三条宗近の作品がありました。細身で綺麗に湾曲していて、芸術品を見るようです。肌も細かく美しい。

一目ぼれしてしまいます。

武士の荒々しさより、公家の優美さを優先させたような造りは、いかにも京都の太刀といった育ちの良さを感じます。

 

そして有成の石切丸。有成は三条派の鍛冶と伝わりますが、腰ぞりと言い肌感といい、安綱派に近いものを感じました。これは季節君の勝手な感想です。

 

幸いにして、行く先々でお客様が空いていてしっかりと鑑賞することができた今回の安綱展。あまりに多くの名品を見過ぎて、消化不良を起こしそうです。